法人カードで経費を払うようになると、毎月カード会社から利用明細が届きます。日付、利用先、金額がそろっているので、これを保存しておけば経理の証憑として十分だと考える方もいるかもしれません。消費税のインボイス制度のもとでは、この考え方が通用しない場面があります。
国税庁は、カード会社が発行する請求明細書は、仕入税額控除のために保存すべき請求書等には当たらないとしています。控除を受けるには、原則として、カード会社ではなく、実際に商品やサービスを売った加盟店が発行するインボイスを保存する必要があります。高速道路のETC利用やカード会社発行のタクシーチケットには、別の扱いが用意されています。
本記事は、国税庁の質疑応答事例、インボイスQ&A、インボイス制度特設サイトで本文を確認できた記載だけを使い、法人カードの利用明細とインボイスの関係を整理します。個別の取引で仕入税額控除を受けられるかどうかは、当サイトでは判断しません。最終的な処理は税理士などの専門家に確認してください。
カード会社の利用明細は、インボイスの代わりにならない
国税庁は、クレジットカード会社が交付する請求明細書は、仕入税額控除に必要な請求書等には該当しないとしています。質疑応答事例「クレジットカード会社からの請求明細書」の回答要旨は次のとおりです。
クレジットカード会社がそのカードの利用者に交付する請求明細書等は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者(カード加盟店)が作成・交付する書類ではなく、当該他の事業者(カード加盟店)の氏名又は名称及び登録番号が記載された書類にも該当しないため、消費税法第30条第9項に規定する請求書等には該当しません。
出典: 国税庁 質疑応答事例「クレジットカード会社からの請求明細書」(ページ記載「令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成」/当サイト確認日 2026年10月3日)
理由は2つ示されています。1つは、明細を作っているのが売り手(加盟店)ではなくカード会社だということです。もう1つは、明細に加盟店の登録番号などが書かれていないということです。国税庁の特設サイトは、インボイスを「売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるもの」と説明しています。当サイトの理解では、売手ではないカード会社の書類ではこの役割を果たせない、という整理です。
同じ回答要旨は、続けて結論を述べています。「したがって、クレジットカード会社の作成した請求明細書を保存することにより仕入税額控除の適用を受けることはできません。この場合、課税資産の譲渡等を行った他の事業者(カード加盟店)から受領した適格請求書等を保存することで、仕入税額控除の適用が認められます。」
ただし、この回答には注記があります。国税庁は「この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありません」としたうえで、個別の取引では「この回答内容と異なる課税関係が生ずることがある」と断っています。
保存するのは、加盟店が発行するインボイス
法人カードで支払った経費について仕入税額控除を受けるには、支払先の加盟店からインボイスを受け取って保存するのが原則です。国税庁のインボイス制度特設サイトは、インボイスの記載事項として次の6項目を挙げています。
| 番号 | 国税庁が挙げる記載事項 |
|---|---|
| ① | インボイスの交付先である相手方の氏名または名称 |
| ② | 売手(自社)の氏名又は名称及び登録番号(法人カードの支払いでは加盟店のもの) |
| ③ | 取引年月日 |
| ④ | 取引内容(軽減税率の対象品目である旨) |
| ⑤ | 10%・8%それぞれの対象となる対価の総額及び適用税率 |
| ⑥ | 10%・8%それぞれの消費税額等 |
出典: 国税庁 インボイス制度特設サイト(当サイト確認日 2026年10月3日)
ここで実務上の手がかりになるのが、書類の名称を問わないという点です。特設サイトは「請求書に限らず、所定の事項が記載された書類であれば、領収書や納品書など書類の名称を問わず、インボイスとなります。」と書いています。特設サイトの記載に照らすと、カードで支払った店舗のレシートや、ネットで購入した際の領収書データも、上の記載事項を満たしていればインボイスに当たると考えられます。
国税庁は、不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食店業、タクシー業では、記載事項の一部を省略した簡易インボイスを交付できるとしています。交付できる業種は、特設サイトが案内する国税庁の資料で確認できます。特設サイトは、宛先の省略と、税率または税額のどちらか一方の記載でよいことを示し、「受け取ったインボイスに宛名等の記載がなくても、不備ではなく簡易インボイスである場合がありますのでご注意ください。」と注意を促しています。カード払いのレシートに会社名が入っていないことだけを理由に、インボイスではないと判断する必要はありません。
カードの利用明細と加盟店のインボイスの役割の違い
カードの利用明細と加盟店のインボイスは、記載が似ていても、作成者と役割が異なります。国税庁の記載をもとに、両者を並べます。
| 項目 | カード会社の利用明細 | 加盟店のインボイス |
|---|---|---|
| 作成・交付する者 | カード会社 | 商品やサービスを売った加盟店 |
| 売手の登録番号 | 記載されていない(国税庁の回答要旨) | 記載事項に含まれる |
| 仕入税額控除のための保存 | これだけでは不可(国税庁の回答要旨。ETCの高速道路料金は問103の別扱い) | 原則として必要 |
この表は国税庁の記載を当サイトが並べたものです。ETCの高速道路料金やカード会社発行のタクシーチケットでは、後の節のとおり国税庁が利用明細を使う扱いを示しています。それ以外の場面でも、どの日にどこで何に使ったかを一覧できる記録として、利用明細を経費の照合のために保管しておくことを当サイトは勧めます。
ETCカードの高速道路料金は、利用証明書を使う
高速道路の通行料金をETCカードで払った場合については、国税庁が別の扱いを示しています。インボイスQ&A 問103 は、原則として高速道路会社のETC利用照会サービスから利用証明書をダウンロードして保存するよう求めています。
支払った料金に係る仕入税額控除の適用を受けるには、原則、高速道路会社が運営するホームページ(ETC利用照会サービス)から通行料金確定後、適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録(以下「利用証明書」といいます。)をダウンロードし、それを保存する必要があります。
出典: 国税庁 インボイスQ&A 問103(PDF)(見出しの注記「令和5年10月追加」「令和6年4月改訂」/当サイト確認日 2026年10月3日)
利用が多く、すべての利用証明書を保存するのが難しい場合の扱いも示されています。カードの利用明細(個々の高速道路の利用内容が分かるもの)と、利用した高速道路会社等ごとに任意の一取引の利用証明書をあわせて保存すれば、仕入税額控除を行って差し支えないとされています。さらに注記1は、その利用証明書について「クレジットカード利用明細書の受領ごとに(毎月)取得・保存する必要はなく」、高速道路会社等が適格請求書発行事業者の登録を取りやめないことを前提に、一回のみ取得・保存することで差し支えないとしています。
注記2には、もう一段の扱いがあります。国税庁は、電磁的記録で提供を受けたインボイスは電子帳簿保存法に準じた方法で保存する必要があり、記録をいつでも確認できる状態にあれば必ずしもダウンロードしなくてよい、という前提を示しています。そのうえで、ETC利用照会サービスでダウンロードできる期間(15か月間)に同じ高速道路会社等の道路を繰り返し利用している場合は、いつでも利用証明書をダウンロードできる状態にあるため、「クレジットカード利用明細書の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることが可能です」とされています。ただし、ダウンロードできる期間を超えて利用間隔が空く道路については、利用証明書のダウンロードが必要になると注意書きがあります。
この扱いの対象になるETCクレジットカードは、カード会社がETCシステムの利用のために交付するカードです。問103 は、高速道路会社が発行するETCコーポレートカードとETCパーソナルカードを除くと明記しています。法人カードに付けたETCカードが前者に当たるかを確認してから、この扱いを使うのが確実です。また、問103 は高速道路の利用料金についての扱いであり、ETC以外のカード払いにそのまま当てはめることはできません。
インボイスを保存しなくてよい場合
インボイスの保存が原則であることには、例外があります。国税庁の特設サイトは、簡易課税制度や2割特例・3割特例を使う場合には、受け取ったインボイスを保存しなくても仕入税額控除を受けられるとしています。ただし、これらの特例には対象の限定があります。国税庁のインボイスQ&Aの目次では、2割特例は「適格請求書発行事業者の登録により課税事業者となった免税事業者」、3割特例は「適格請求書発行事業者の登録により課税事業者となった個人事業者」についての経過措置として掲げられています(国税庁 インボイスQ&A 目次/当サイト確認日 2026年10月3日)。3割特例の問(問114-2)の見出しは「小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置〈3割特例〉」です。また、2割特例は目次の問114で「適格請求書等保存方式の開始後一定期間」の経過措置とされています。当サイトはどちらも要件の本文を確認していないため、法人の経理ではこれらの特例を前提にせず、適用の可否は税理士に確認してください。
カード会社が発行するタクシーチケットについても、国税庁は別の扱いを示しています。インボイスQ&A 問108-2 は、原則として適格簡易請求書の保存が必要だとしたうえで、チケットが取引先に手交されるなど保存が困難な事情を踏まえ、受領したクレジットカード利用明細書と、タクシー事業者のホームページやカード会社のホームページ等に掲載されている利用可能タクシー一覧によって、利用したタクシー事業者が適格請求書発行事業者であると確認できる場合には、帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けて差し支えないとしています。問108-2 が扱うのはカード会社発行のタクシーチケットであり、法人カードでタクシー代を直接払った場合の扱いを述べたものではありません(国税庁 インボイスQ&A 問108-2(PDF)/見出しの注記「令和6年4月追加」「令和8年4月改訂」/当サイト確認日 2026年10月3日)。
また、特設サイトは「令和13年(2031年)9月末までは、インボイスの保存がなくても仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。」と書いています。割合や適用の要件は本記事では扱わないため、国税庁の資料で確認してください。
なお、簡易課税制度などを使う場合でも、書類の保存が不要になるわけではありません。特設サイトは「ただし、所得税等の観点からは、これまでどおり領収書や請求書などの書類の保存が必要です。」と注記しています。消費税の計算でインボイスが不要になることと、領収書を捨ててよいことは別の話です。
当サイトで確認できていないこと
本記事の範囲を明示します。確認が取れていない事項は、推測で埋めずにそのまま残します。
- 2割特例・3割特例と経過措置の割合・要件・期間の詳細は、本記事では調べていません(対象の限定は国税庁のQ&A目次の見出しで確認した範囲です)
- 2割特例を法人がいつまで使えるか(適用期間の終期)は確認できていません
- 国税庁Q&Aの目次には、一定規模以下の事業者の1万円未満の課税仕入れについての軽減措置(問111)や、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合(問104)の問いもあります。本記事ではこれらの要件を扱っていません
- 海外のサービスにカードで支払った場合の扱いは、本記事で確認した資料の範囲外です
- 各カード会社が利用明細のデータをどの形式で提供しているかは確認していません
- 電子で受け取ったインボイスの保存方法(電子帳簿保存法との関係)は、問103 の注記で触れられている範囲を超えては扱っていません
- 個別の取引で仕入税額控除を受けられるかどうかは、当サイトでは判断しません。国税庁の質疑応答事例も、一般的な回答であると注記しています
カード払いの経費で確認する手順
法人カードで経費を払うときに、インボイスの観点から確認する順序は次のとおりです。
- 支払先から、レシート・領収書・請求書のいずれかを受け取る。カード会社の利用明細とは別に必要です
- 受け取った書類に、売手の登録番号など国税庁が挙げる記載事項があるかを見る。不特定多数の者に対して販売等を行う小売業・飲食店業・タクシー業で交付される簡易インボイスは、宛名がない場合があります(交付できる業種は国税庁の資料で確認します)
- ETCの高速道路料金は、ETC利用照会サービスの利用証明書の扱いを確認する。使っているETCカードの種類(カード会社発行か、高速道路会社発行か)も確かめます
- 自社が簡易課税制度や特例を使っているかを確認する。3割特例は国税庁Q&Aの目次で個人事業者についての経過措置として掲げられています。特例を使っている場合も、所得税等の観点から書類の保存は必要です
- 判断に迷う取引は、税理士などの専門家に確認する
法人カードそのものの選び方は創業期から使える法人カードの選び方で、年会費の条件の読み方は法人カードの年会費の見方で整理しています。
よくある質問
Q.法人カードの利用明細はインボイスの代わりになりますか?
A.なりません。国税庁は、クレジットカード会社の請求明細書は消費税法上の請求書等に該当せず、それを保存しても仕入税額控除は受けられないとしています。加盟店から受け取った適格請求書等の保存が必要です(当サイト確認日 2026年10月3日)。ただし、ETCクレジットカードで払った高速道路料金には、国税庁のQ&A 問103 が別の扱いを示しています。
Q.宛名のないレシートはインボイスとして使えますか?
A.簡易インボイスであれば使えます。国税庁は、不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食店業、タクシー業では宛先を省略した簡易インボイスを交付できるとしており、「受け取ったインボイスに宛名等の記載がなくても、不備ではなく簡易インボイスである場合があります」と注意を促しています(当サイト確認日 2026年10月3日)。
Q.ETCカードで払った高速道路料金はどう保存しますか?
A.カード会社発行のETCクレジットカードで精算した場合(高速道路会社発行のETCコーポレートカード等は除く)、原則はETC利用照会サービスから利用証明書をダウンロードして保存します。国税庁のQ&A 問103 は、利用が多い場合に、カードの利用明細(個々の利用内容が分かるもの)と高速道路会社等ごとの任意の一取引の利用証明書をあわせて保存する方法も示しています(当サイト確認日 2026年10月3日)。
Q.利用明細は保存しなくてよいのですか?
A.利用明細はインボイスとしては使えません。ただし、ETCの高速道路料金やカード会社発行のタクシーチケットでは、国税庁が利用明細を使う扱いを示しています(当サイト確認日 2026年10月3日)。それ以外の場面でも、経費の照合の記録として保管しておくことを当サイトは勧めます。
Q.インボイスを保存しなくても控除を受けられる場合はありますか?
A.あります。国税庁は、簡易課税制度や2割特例・3割特例を使う場合には、受け取ったインボイスを保存しなくても仕入税額控除を受けられるとしています(当サイト確認日 2026年10月3日)。2割特例・3割特例には対象の限定があり、2割特例は期間を限った経過措置、3割特例は国税庁Q&Aの目次で個人事業者についての経過措置として掲げられています。所得税等の観点からは、領収書などの書類の保存は引き続き必要です。
まとめ
法人カードで払った経費のインボイス対応は、カード会社の書類と加盟店の書類を分けて考えると整理できます。
- カード会社の利用明細はインボイスの代わりにならない。国税庁は、作成者が加盟店ではなく、登録番号も記載されていないことを理由に挙げています
- 保存するのは加盟店が発行するインボイス。書類の名称は問わず、宛名のない簡易インボイスの場合もあります
- ETCの高速道路料金には別の扱いがある。利用証明書を使い、条件によってはカードの利用明細と組み合わせて保存します
- インボイスを保存しなくてよい制度や経過措置、カード会社発行のタクシーチケットの特例がある。特例には対象の限定があり、所得税等の観点からの書類の保存も必要です
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